【書評】『素人のウチが10日間で漫画原稿を完成させる話』は漫画作成の時短に本当に役立つのか

漫画作成教本の『素人のウチが10日間で漫画原稿を完成させる話』について、

以下の内容をぶっちゃけて解説します。

  • この本を読めば本当に初心者が漫画を10日間で完成させられるのか
  • この本の重要なポイントは何なのか
  • この本の内容は同人漫画家のわたしが読んで本当に役に立ったのか

今回紹介する書籍はこちら

【結論】少ない労力・短い作業時間で読者に伝わる漫画を描きたい人にはこの本はとても役に立ちます

  • 「素人」とタイトルにあるので初心者向けっぽい印象を受けますが、どちらかというと漫画をすでに描いている中級者以上の人で原稿の作成スピードを上げたい人向けの本です。
  • 締め切りに間に合わせるための上手な手の抜き方や最低限の描写で読者に伝わる漫画の描き方を教えてくれます。
  • コンテンツの作成スピードが人気につながる現代においてはトレンドを押さえている本だと言えると思います。逆にどんなに時間がかかっても自分の納得がいく漫画作品をじっくり描きたいというタイプの人には向いていない本です。

この本の概要

この本についてざっくり言うと

一般的な漫画の技法書ではあまり紹介されない

短い時間で読者に伝わる漫画を描くためのテクニックが紹介されている本です。

 

例えば背景を描くための技術としてパースがありますが

一般的な漫画技法書では一点透視図法や二点透視図法、三点透視図法のそれぞれの描き方が解説され

一点透視図法は奥行きを、二点透視図法は空間の広さを、三点透視図法は高さを表現すると紹介されます。

 

この本では上記の一般的な漫画技法書での説明に加えて

どれが一番作画コストが低く短時間で描くことができるかが説明されています

 

一般的に一点<二点<三点の順で描くのに時間がかかり作画難易度も高くなりますが

この本では一番楽に描くことができるのは「アオリの三点透視」だと解説しています。

(アオリとは下から見上げた角度で描いた絵のことを言います)

 

理由は背景に地面が入っていると人物を描く必要が出てくる場合が多く

人物を入れるとごまかしが効かず作画に時間がかかってしまいますが、

空と建物などの一部が入っているだけの「アオリの三点透視」だと

人物を描く必要がなく、建物の作画が難しい部分は木などの描きやすいものでごまかせるため

一番描くのが楽なためです。

 

著者の大塚 志郎さんは現在も漫画家や同人誌作家として活躍されている方で

プロの漫画アシスタントとしても長く活動されていたようで

漫画を描くノウハウ系の本を他にも出していらっしゃいます。

この本を読んで得する人、逆に合わない人

この本を読んで得する人

以下のような人たちはこの本を読むことで

すぐに実践できる漫画作成の効率化に関するテクニックを学ぶことができ、

本の値段以上のメリットを与えてくれると思います。

 

  • 漫画でのプロデビューを考えている人
  • 漫画で同人誌を作っていたりWEB連載をしているなどでいつも漫画の締切に追われて時間がない人
  • 漫画の背景が描けなくて困っている人

この本が合わない人

この本では漫画の書き方を最初から順序立てて説明しているわけではありません。

 

漫画の工程は大きく分けると草案、ラフ、下描き、ペン入れ、仕上げの5つに分かれますが

この本で解説しているのはペン入れと仕上げについてのみになります。

 

ですので漫画をそもそも描いたことがないという人はこの本を読む前に

初心者向けの漫画の描き方を解説した別の本を読んだ方が良いでしょう。

 

また、この本は背景の描き方がほとんどで人物の描き方についてはほぼ解説がありませんので

人の描き方が知りたい方にもあまり適していない本です。

 

そもそも漫画作成の時短に興味がない方、

ひとつの作品をじっくり時間をかけて作成したい方がこの本を読んでも響く内容はあまりないと思います。

わたしがこの本を購入した理由

こちらの記事でも同様のことを書いたのですが

過去のわたしは会社員と資格取得と同人活動を並行して行っており

あまりに時間がなかったのでいかに速く原稿を描けるかを追求していました。

 

その時期に漫画を速く完成させるためのテクニックを知りたくてこの本を購入しました。

読了後、作業効率はどのように変化したか

『素人のウチが10日間で漫画原稿を完成させる話』には紹介されているテクニックのうち

わたしは以下のテクニックを実際に採用しました。

  • 漫画の冒頭のコマのみ背景を描いて場所と時間を読者に提示し、他のコマではできるだけ背景を省く
  • 1枚の背景を複数のコマで使い回す
  • 使うトーンの種類はできるだけ少なくする
  • 背景は光の部分を飛ばして描き、陰はベタで時短する

この中にはもともとなんとなく使っていたテクニックもあったのですが

「なぜそうなるのか」という理屈をわからずに使っていたので

この本を読んで「なるほど〜!」と思うところが多かったですね。

この本の気になるところ

アナログ漫画のテクニック説明がメイン

作者の方がアナログでの原稿制作がメインなのだと思いますが

デジタルについては最後にちょっとだけ触れるくらいで

基本的にアナログ原稿の作成についての話が展開されます。

 

記載されているテクニックはデジタルでも応用可能なものが多いので

デジタルの人も最後まで読んでみると良いと私は思います。

本のタイトルと本の内容にギャップがある

本のタイトルは『素人のウチが10日間で漫画原稿を完成させる話』ですが

実際の内容は「プロ漫画家が教える締め切りに間に合わせるための原稿作成テクニック」です。

 

本のタイトルだけを見て初心者の方がこの本を買うと

自分が求めていた内容じゃない!という場合もあり得そうなので

初心者の方は内容を確認された上で購入することをオススメします。

まとめ:『素人のウチが10日間で漫画原稿を完成させる話』は漫画作成の時短に役に立つのか

一般の漫画技法書では掲載されていない現場のテクニックを知ることができる

素人のウチが10日間で漫画原稿を完成させる話』は

すでに漫画を描くことできる中級者以上の方が

伝わる漫画をできるだけ短い時間で描くテクニックを身につけるのにオススメの本です。

 

なんで自分は漫画描くのこんなに遅いんだろう・・・と悩んでいる人は結構多いと思いますし、

その理由は人それぞれです。(デッサン力がない、描き込み過ぎ、描く前に話が練りきれてないなど)

 

この本に紹介されているテクニックは簡単だけど知らないから使っていないものが多いので

原稿作成の合間にサクッと読んでみるとすぐに使えるテクニックもあると思いますよ。

 

漫画形式なので気軽に読めますし、1時間くらいで読み終わることができるのではないでしょうか。

 

この記事を読んで「この本読んでみたいな」という気持ちになった人はこちらからどうぞ。