先日、マンガやイラストを描き始めた方とお話していたときに
イラストやクリスタの参考書には線の太さなどの設定の仕方は記載されているが
どれくらいの値を設定するのが適切かは記載されていないので悩んでいる
という相談を受けました。
主線や枠線、吹き出しの線の太さ、セリフの文字の大きさ、トーンの線数は
絵柄によって変わりますので正解と呼べる数値はありません。
ですがイラストを描き始めた方や初めて同人誌を作ろうとしている方向けに
線の太さなどの参考値をまとめておいた方が便利だと思って作ったのが本記事です。
また、ClipStudioPaint(以下クリスタ)でどのように設定するかについても解説しています。
本記事を参考書がわりに使って素敵なイラストや同人誌を作ってくださいね。
下記の参考値をもとに自分の絵柄にあう値を探してみてください
- 各値はB5サイズ、600dpi(pixel/inch)の原稿の場合の参考値です。
- 主線の太さ:17〜25px
- 枠線:線の太さ 12px〜19px、左右の間隔 45px〜95px、上下の間隔 95px〜150px
- 吹き出しの太さ:4〜6px
- セリフ:文字の大きさ 11〜15pt、フォント種類 I-OTFアンチックStd B(クリスタ購入特典)
- トーン:線数 42.5〜85.0線 濃度 10〜80%
単位について
クリスタでは長さの単位としてmm(ミリ)とpx(ピクセル)、
テキストの大きさの単位としてpt(ポイント)とQ(級)が使用できます。
本記事では長さの単位はpx、テキストの大きさの単位はptで記載します。
イラストソフトでそれぞれどちらの単位を使用するかはその人の好みで良いです。
たまにそれぞれ別の単位で表すとどれくらいになるのか知りたくなるときがあるので変換早見表も作りました。
(尊敬している絵描きさんが「私は〇〇pxで主線を描いている」と言っていて参考にしたいが自分は単位としてmmを使用しているとき など)
長さの単位 mm(ミリ)、px(ピクセル)
mm(ミリ)とは
mm(ミリ)はみなさんご存じのようにメートル法で決まっている長さの単位です。
とてもわかりやすい単位なのですが、
Webイラストの世界では後述するpxの方を使用される場合が多いです。
px(ピクセル)とは
上の写真のようにスマホやパソコンでイラストや写真をものすごく拡大するとギザギザになりますよね。
このギザギザの一粒をpx(ピクセル)と言います。
ピクセルの大きさはそのイラストや写真の解像度に影響されます。
解像度って?
解像度を表す単位はdpi(ディーピーアイ)です。
dpiはdots per inchの略で1インチ(25.4mm)に何個のドットが並んでいるかを示しています。
一般的にカラーの印刷物は350dpi、白黒の印刷物は600〜1200dpiでデータが作成がされます。
350dpiと1200dpiを比べると1インチあたりに並んでいるドットの数は
1200dpiは350dpiの約3.4倍ですので、1200dpiの方がきめ細やかに表示できます。
pxをmmに変換するには
pxは解像度によって大きさが変わるため、pxをmmに変換する場合は解像度が必要です。
計算式は mm = px × 25.4÷dpi です。
例えば10pxは解像度72dpiのときは約3.5mmですが、解像度350dpiのときは約0.73mmです。
mm→px変換早見表
mmが解像度の違いにより何pxになるのかの早見表がこちらです。
- 解像度72dpiはWebイラスト、
- 解像度350dpiは印刷用カラーイラスト、
- 解像度600dpiと1200dpiは印刷用白黒イラストに使用されます。
テキストの単位 pt(ポイント)、Q(級)
pt(ポイント)とは
pt(ポイント)は欧米の活字サイズに基づく写植の単位です。
1ptは0.35mmです。
欧米から日本に輸入されたオフィスソフト(Microsoft Officeなど)や
デザインソフト(Adobe illustratorなど)はテキストサイズを指定にptが使用されているため、
日本でもptの方がなじみ深い人が多いのではないかと思います。
Q(級)とは
Q(級)は日本独自の写植の単位です。
1Qは0.25mmです。
編集者や印刷関連の方はこちらの単位を使う場合が多いようです。
クリスタでの単位の指定方法
クリスタで長さとテキストの大きさの単位を指定する方法を説明します。
左上のクリスタマーク>環境設定を開きます。
「定規・単位」の中の「単位」で設定します。
主線の太さ:17〜25px
まずは主線の太さの基準値を見ていきましょう。
B5サイズの600dpi(pixel/inch)で17〜25pxくらいが標準のようです。
ブラシサイズの変更はクリスタのブラシサイズパレットやツールプロパティから変更が可能です。
ただし筆圧の強さや設定、絵柄、用紙の大きさによって適しているブラシサイズは異なるため、
基準値にとらわれず自分の絵にぴったりなサイズを探してみてください。
筆圧は左上のクリスタマーク>筆圧検知レベルの調整から調整可能です。
枠線
枠線の太さ:12px〜19px
コマ枠の太さの基準値は12px〜19pxです。
少年漫画だと太く、少女漫画だと細くなる傾向があります。
コマ枠の太さの指定はコマ枠フォルダー作成時に指定します。
回想シーンのコマなどで細い枠線を使用する傾向があります。
特定のコマのみ枠線の太さを変更したい場合はレイヤーウィンドウでコマ枠フォルダーを選択した状態で
オブジェクトツールで枠線幅を変更したいコマの四隅のいずれかをタップ、
ツールプロパティのブラシサイズからコマ枠の太さを変更します。
枠線の間隔:左右の間隔(45px〜95px)、上下の間隔(95px〜150px)
基準値は左右の間隔(45px〜95px)、上下の間隔(95px〜150px)です。
間隔も少年誌の方が大きく、少女誌は小さくなる傾向があります。
枠線の間隔は左右は小さく上下は大きくした方が読みすいため多くの人がこのルールを採用しています。
枠線の間隔の設定はコマ枠ツールのツールプロパティウィンドウの「左右の間隔」「上下の間隔」で設定します。
吹き出しの太さ:4〜6px
吹き出しの線の基準は4〜6pxです。
ただ漫画家さんによっては主線と同じペンで引いている場合もあるのでもっと太くても良いかもしれません。
フキダシツールのツールプロパティのブラシサイズで太さを変更できます。
フキダシツールのデフォルトの線だとフキダシが絵から浮く場合は
フキダシの線の種類を変更できます。
変更の仕方はこちらをご参照ください。
セリフ
文字の大きさ:11〜15pt、フォント種類 :I-OTFアンチックStd B(クリスタ購入特典)
セリフなどの文字の大きさの基準は11〜15ptです。
かながアンチック体で漢字がゴシック体のアンチゴシック体がマンガの写植に使用されます。
クリスタを使用している場合、I-OTFアンチックStd Bというアンチゴシック体が
購入特典として使用できるため利用すると良いでしょう。
文字の大きさやフォントの種類はテキストツールのツールプロパティから変更が可能です。
マンガの写植については別記事で特集しているので、こちらの記事も合わせてご確認ください。
トーン
線数:42.5〜85.0線
トーンについてはアナログが全盛だった時代から線数は60線が標準とされてきました。
ただ個人的には60線は点が大きすぎるように感じますのでわたしは基本85線を使用しています。
アナログ原稿は85%程度縮小して印刷する場合が多いので
60線くらい大きいトーンが良いとされてきたのではないかと思います。
絵柄や好みによって線数は42.5〜85.0の間で自由に選んで良いと思います。
トーンの大きさは印刷する紙によっても変えた方がよく、
コミック紙などの表面がざらざらしている紙の場合は大きめのトーン、
上質紙などの表面が平滑な紙の場合は小さめのトーンを使うと印刷映えがします。
濃度:10〜80%
トーンの濃度の基本は10%〜80%です。
これ以外の濃度だときれいに印刷することが難しく、
5%のトーンだと貼っていないように印刷されたり、90%のトーンだとベタのように印刷されてしまいます。
トーンの線数と濃度はレイヤープロパティから変更が可能です。
余談:砂目トーンについて
セーターやウールの洋服などに使用されることが多い砂目トーンというトーンがあります。
クリスタのノイズトーンが砂目トーンにあたると思うのですが、
ノイズトーンは砂目以外に斜め方向に模様が入っているように見えるので個人的に好きではなく、
下のクリスタ素材を砂目トーンとして使用しています。
まとめ
絵が自由に描くものなのであまり基準にとらわれて欲しくはないのですが
お金をかけて印刷する同人誌で失敗したくないという気持ちもわかります。
本記事を参考に自分の絵柄にあった線の太さなどを見つけてくださいね。
印刷でどのように出るかを確認したい場合はコンビニのネットプリントを利用して
試し刷りをしてみると良いですよ。
家庭のプリンターで利用されるインクジェットプリンターは線が太りやすいので
線の太さの確認には適しません。