レベル補正ってイラストのメイキングなどで見かけたことはあるけれど使い方がよくわからない。
とりあえず使ってみようとクリスタのレベル補正の画面を開いていじってみたけど、
色が変になってしまった・・・。
そんな経験はありませんか。

前回解説したトーンカーブと同様に
レベル補正も機能の存在は知っているけれど
使い方はよくわからない、
でも使ってみたい機能のひとつではないでしょうか。
難しそうに思えるレベル補正ですが、
トーンカーブよりは操作は簡単です。
というより
どんな絵であってもレベル補正で行う操作はほぼ同じなので
一回やり方を覚えてしまえばそれでOKな機能なんです。
本記事では
- レベル補正ってそもそもなに?
- レベル補正ってどういう仕組みなの?
- 実際イラストを描く際にレベル補正をどう活用するのか
を解説していきます。
本記事を読むと
「レベル補正ってなんだカンタ〜ン!」と思えてしまいますよ。
【結論】レベル補正はトーンカーブの前に色調の分布を調整するために使用する機能です
- レベル補正は特定の色調に片寄ってしまった絵(暗すぎる絵 or 明るすぎる絵)を豊かな色調に整える機能です。
- レベル補正とトーンカーブは似ている機能ですが得意分野が違います。
- レベル補正は絵全体の調子を整えるのが得意です。
- トーンカーブは絵の中の特定の要素(光や陰、特定の色)を全体になじませながら整えるのが得意です。
- まずはレベル補正で全体を整え、その後トーンカーブでイメージ通りの絵になるように調整するという順番で操作を行います。
レベル補正の説明に入るまえに その1:トーンカーブについて
この記事は以下のトーンカーブの記事での知識を前提に解説していきます。
本記事を読み始める前にあらかじめ読んでおくか
わからない単語にぶつかったら参照してくださいね。
トーンカーブを使いこなして簡単に絵のクオリティをアップしよう【クリスタ】
カラーイラストを描き終わって最終調整をするときに、そういえばプロのイラストレーターさんはトーンカーブを使って最終調整をしていたな・・・と思い出して、とりあえずトーンカーブを使ってみたけど色味がめちゃく...
レベル補正の説明に入るまえに その2:ヒストグラム

ヒストグラムとは、絵の中に使われている色を分解して同じ色ごとに積み上げたものです。

左側のイラストには黒、濃い灰色、薄い灰色、白の4色が使用されています。
この4色を使われている色ごとに積み上げたのが右側のヒストグラムです。
ヒストグラムは左から右に向けて黒から白の順に並んでいます。
ヒストグラムを見るとき、
左側に大きな山がある場合は黒の分量が多い絵、
右側に大きな山がある場合は白の分量が多い絵ということです。
クリスタのレベル補正は2種類ある
ではレベル補正の説明に入りますね。
レベル補正もトーンカーブと同様に
- そのレイヤー自体の色味を編集するレベル補正(編集>色調補正>レベル補正)
- 色調補正レイヤーとしてのレベル補正(レイヤー>新規色調補正レイヤー>レベル補正)
の2種類のレベル補正があります。
基本的には2つ目の「色調補正レイヤーとしてのレベル補正」を使用してください。
理由は色調補正レイヤーでレベル補正を編集すれば
うまく調整できなかった場合レイヤーを削除すれば元通りの色味に戻すことが可能だからです。
「そのレイヤー自体の色味を編集するレベル補正」でレベル補正をすると
後から色味が気に入らなくて元に戻したくても
ヒストリーが消えてしまっていたら元に戻せませんので注意が必要です。


レベル補正の仕組みとやり方
では実際にレベル補正をやってみながら
レベル補正の仕組みについて説明していきますね。
今回のサンプル写真と仕上がり目標

今回はこちらの写真を色調補正で調整していきます。
色調補正をするときに大事なのは
どのような絵にしたいかを色調補正をする前にしっかり頭の中でイメージしておくことです。
色調補正しながらいい感じにしようとすると
時間がかかってしまいますし、
仕上がりが元の絵からかけ離れたものになってしまいます。
今回はこちらの写真を
- 全体がぼんやりしているのでコントラストをつけて、木や窓の外の建物をはっきりさせる
- 黄色が強く出ているので、それぞれの物の固有色に近づける
この2点を目標に調整していきます。
色調調整の手順
今回の色調調整の手順は
- レベル補正で全体の調子を整える
- トーンカーブで細部を調整する
の順で行います。
レベル補正で行うのは
- シャドウ入力とハイライト入力を使われていない色域の端に寄せる
- ガンマ入力を調整する
この2つの操作がメインです。
これ以外の操作はレベル補正ではほとんど使われません。
今回はこの2つの操作を覚えてくださいね。
レベル補正の画面の説明

上がレベル補正の画面です。
「入力」にヒストグラムが表示されており、その下に山型の記号が3つ並んでいます。
この山型の記号を左からシャドウ入力、ガンマ入力、ハイライト入力と言います。
下側の「出力」については実際に操作をしながら説明します。
シャドウ入力とハイライト入力を調整する

まず最初に「シャドウ入力とハイライト入力を使われていない色域の端に寄せる」という操作を行います。
ヒストグラムを見ると左4分の一くらい(赤枠部分)に山がないことがわかります。
この写真は赤枠内の色域が使用されていないということです。
赤枠の右端にシャドウ入力を寄せれば調整は完了です。
今回の写真ではヒストグラムの右側ギリギリまで山がありますが
全体的に暗い絵の場合、右側部分にヒストグラムの山がない場合があります。
その場合はハイライト入力を左に寄せます。
ヒストグラムで使用されていない色域の端に
シャドウ入力とハイライト入力を寄せるという操作を行ってください。
この操作はなんのためなのかは後で解説します。
ガンマ入力を調整する

次に真ん中の山型、ガンマ入力を調整します。
ガンマ入力の調整はプレビューをみながら自分でいい感じのところに調整してもらえばOKです。
ガンマ入力を右に寄せると全体が暗くなり、左に寄せると全体が明るくなります。


レベル補正を行うと色域を無駄なく使用できるようになる

上の画像は先に行ったレベル補正を「OK」で確定した後に
再度レベル補正を開いた時のヒストグラムです。
ヒストグラムの山の形が変わり、
全体的に低くなっているのがわかりますでしょうか。
使用していなかった色域をシャドウ入力とハイライト入力を調整して切り捨てることで
その他の色で色域全体を使えるようになり細かな色表現ができるようにするのが
レベル補正の効果です。

1色しか使われていない絵(左側のヒストグラム)があるとします。
レベル補正を行うと
無駄な色域を切り捨て色域を最大限に活用し
いろいろな灰色で描かれた絵(右側のヒストグラム)になります。
ここの説明がレベル補正でいちばんわかりにくいところなので
さらに例を用いて解説します。
無駄な色域があるということは
たとえば赤、青、黄色、白、黒の5色で絵の具で絵を描いてくださいと言われたときに
赤、青、黄色の3色の絵の具で絵を描いているようなものです。
いや、白と黒を使えばもっといろいろな色が作れるでしょ!
使えよ!!って思いますよね。
そのツッコミがレベル補正です。
・・・余計わからなくなったでしょうか。
もし理屈がわからなくてもレベル補正の手順さえ覚えてしまえば大丈夫なので
深追いしなくてOKです!
レベル補正はRGBのチャンネルごとに行うことも可能


今までの操作はレベル補正の「RGB」のチャンネルで操作を行いました。
レベル補正には「RGB」以外に「Red」「Green」「Blue」のチャンネルでも操作を行えますが
実際はあまり使用しません。
理由はレベル補正だと全体の色味が均一に変わってしまうため
細かな色調整ができるトーンカーブで行った方がイメージの色味に近づけやすいからです。
レベル補正の出力の調整


後回しにしているレベル補正の「出力」の解説をしますね。
出力のグラデーションバーの下にある山型を調整することで色域の範囲を狭めるのに使用します。
出力の山型を内側に寄せてレベル補正を確定させると、
入力のヒストグラムがぎゅっと縮まったのが上の画像からわかると思います。
全体的に色を均一にしたい場合に使用しますが、正直あまり使わないです。
以上でレベル補正の解説は終了です。
以降はトーンカーブで色調補正を最後まで行った過程の解説をしています。
トーンカーブで細部の調整をする

トーンカーブで最終調整をしていきます。
全体に色味がぼんやりしているので、コントラストを強めるために
RGBチャンネルでトーンカーブをS字にします。
ちょっとだけ曲げるのがコツです。
トーンカーブの操作の仕組みが知りたい人は前回のトーンカーブの記事を参照してください。
トーンカーブを使いこなして簡単に絵のクオリティをアップしよう【クリスタ】
カラーイラストを描き終わって最終調整をするときに、そういえばプロのイラストレーターさんはトーンカーブを使って最終調整をしていたな・・・と思い出して、とりあえずトーンカーブを使ってみたけど色味がめちゃく...

壁の影の分に緑色が強く出ているため、Greenチャンネルの左半分(黒側)を右下にちょっとだけ寄せます。
これで黒っぽい部分の緑が弱くなり補色のピンク色が強くなります。

壁の影に黄色を消したいので、Blueチャンネルの左半分(黒側)を左上にちょっとだけ寄せます。
黒っぽい部分の黄色が弱くなり、補色の青が強くなります。

全体が赤っぽいので壁の色を中心に赤を抜くため、Redチャンネルの右半分を右下にちょっとだけ寄せます。
白っぽい部分の赤みが弱くなり、補色の水色が強くなります。
カーペットのグレーや中央の枯れた植木の黄金色、窓の外の木の緑が固有色に近づいたと思いますので
これで色調調整は完了です。
補正前後の画像の比較



元の写真は全体的に黄色っぽいグレーがかかった淡い色味でしたが、
レベル補正で物の輪郭がはっきりし
トーンカーブで物の色味が明確になったと思います。
まとめ
レベル補正の仕組みはわかりましたでしょうか。
色調補正についての他の解説記事を読んでみると
機能の説明をして終了していたり
どういう狙いで色調補正をしているかが読者にはよくわからない記事が多いような気がします。
レベル補正もトーンカーブも
自分の中でどういう仕上がりを目指しているかを明確にすることが一番大事です。
目指す目標がないと色調補正の機能に振り回されてしまいます。
自分の望む仕上がりに近づけるためにどの色調補正を使えばいいかを選択できれば
お絵描き上級者と言ってもいいのではないでしょうか。
理論も大事ですが実際に操作して、からだで覚えることも大事です。
恐れずにどんどんレベル補正やトーンカーブを使ってみましょう!
その他の色調補正機能の解説記事
こちらの記事もぜひ読んでみてくださいね。
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