十数冊の同人誌を作ってきたわたしですが、今でも印刷部数を決めるのは難しいです。

理由は作家側でコントロールできない要素に印刷部数は大きく左右されるからです。


印刷部数に影響するコントロールできない要素としては以下があげられます。

  • あなた自身の人気
  • ジャンル、カップリングの人気
  • 参加イベントの盛り上がり
  • 社会状況

作家自身にどうしようもできない要素が強く影響するのが部数なので

同人誌初心者の方はあまり深く悩まずに「100部」で印刷することをオススメします。


本記事でははじめて同人誌を作る人に向けて

同人誌の部数をどのように決めればよいのかを解説しています。


本記事を読んで部数をサクッと決めて原稿作成にさっそく取り掛かりましょう!



【結論】初めての同人誌の印刷部数は100部がオススメ

初めての同人誌の印刷部数が100部がオススメの理由

新刊の賞味期限は3ヶ月〜半年程度だから

女性向けの二次創作の場合は春夏秋冬の大イベント、男性向けの場合は夏冬のコミケに合わせて新刊を作るサークルが多い傾向があります。

同じような内容で新刊と既刊が並んでいた場合、新刊の方が売れやすいです。

新刊として扱われる賞味期限は3ヶ月〜半年程度と考えるとその間で売り切ることができない大部数は刷らない方が無難です。

同人誌に限らず現在のエンターテインメント業界において、ライトな内容で頻繁に新しいコンテンツが提供することを強みとする人たちが出てきました。

たとえばYouTuberとして人気になるには毎日動画を投稿することが一番の近道です。

これは技術進歩によってコンテンツ(同人誌や漫画、動画など)を作成する時間的・場所的・価格的コストが低下している供給側の状況と、コンテンツを楽しむ側(需要側)が短時間で完結するライトなコンテンツを好む傾向が近年出てきたという2つの原因があると思います。

あなたが1年に1冊しか同人誌は出さないがページ数は100ページのめっちゃ練り上げられた物語を描きたいというならば、それももちろんOKです。

ただこのシリーズでは初めての同人誌を題材に扱っているので、1冊目の同人誌は3ヶ月〜半年程度で無理なく売り切れる量、具体的には100部をオススメします。

売れ残ったとしても物理的にどうにか扱える量だから

こちらの記事で初めての同人誌のオススメのページ数は20ページとしています。

20ページで100部だと小さめの段ボール1箱に収まるため、もしイベントで売れ残ったとしても保管や処分がそれほど大変ではない量です。

200部、300部・・と増えていくと保管スペースも取りますし廃棄するとなった時にも大変になります。

売上と費用が同じくらいになるから(ただし全部売り切る必要あり)

A5サイズ20ページの同人誌の印刷部数による利益をシミュレーションしてみましょう。

印刷料金は某印刷屋さんのフルカラーPPパックをもとに、端数金額を丸めた数値に変更してあります。

1冊300円で販売した場合、売上と印刷費用が同じになる冊数は大体70冊くらいです。

販売数が70冊を超えると売上が費用を超え黒字になりますが、同人誌を作成してイベントに参加するには印刷費用以外にイベント参加費や交通費もかかります。

それらの費用を加味し100冊くらい売れると赤字にはならないと判断して100冊を印刷部数としてオススメしています。

【例外】印刷部数を100部より多くすることも考えた方が良いケース

例外的に以下の場合は100部以上も検討しても良いかもしれません。

  • 同人活動は初心者だがSNS(Twitter、Pixiv)での人気が高い場合

損益分岐点の表を見てもらうとわかりますが、100冊を2回刷るよりも200冊を1回の方が原価が安くなります。

勇気が必要ですが思い切って部数を多めに印刷するのもアリかもしれません。

「SNS(Twitter、Pixiv)での人気が高い」の定義

「SNS(Twitter、Pixiv)での人気が高い場合」というのはフォローしている数に対してフォロワーが極端に多い場合を指します。

例えばあなたが100人フォローしているのに対し、あなたをフォローしている人が10,000人いるような場合です。

1,000フォロー1,100フォロワーの場合、1,100人のフォロワーのうちフォローバックの人が1,000人、純粋にフォローしている人は100人ということなので、このケースは「SNS(Twitter、Pixiv)での人気が高い場合」には当てはまりません。

ジャンルやカップリングが旬の場合は部数を増やしてよいかどうか

ジャンルやカップリングが旬の場合は印刷部数を100部から増やしてもいいのではないかと考える人もいるかもしれません。

旬ジャンル・旬カップリングというのはSNS上で盛り上がっていたりイベント参加サークル数が急増加しているジャンルやカップリングを指します。要するに「流行り」です。

同ジャンルやカップリングのファンが多いため、売れる数も相対的に多くなる傾向があります。

あなたがそのジャンルやカップリングである程度知名度があるならば印刷部数の増加も考えてもいいと思いますが、旬ジャンル・旬カップリングだから簡単に売れるというわけでもありません。

需要も多いが供給も多い、つまり同人誌を作り手も多い状態になるからです。

人気作家が他ジャンル・他カップリングから流入してくることもあるでしょう。

競争の激しい中で同人誌を作ることになりますから旬であっても安易に部数を増やすのは慎重になった方が良いと思います。

印刷部数を100部より少なくすることも考えた方が良いケース

どんなにあなたががんばっても100部を売り切ることも難しいケースも存在します。

以下のような場合はオフセット印刷を諦めてオンデマンド印刷に変更し、1冊あたりの単価を抑えて小部数にした方が良い可能性が高いです。

  • あなたのSNS(Twitter、Pixiv)のフォロワーがほとんどいない場合
  • ジャンルが一次創作の場合
  • ジャンルが二次創作だが過疎ジャンル、過疎カップリングの場合
  • 書店委託をせずに自宅で在庫を保管する場合

SNS(Twitter、Pixiv)のフォロワーがほとんどいない場合

イベント参加者の多くは事前にSNS(Twitter、Pixiv)で情報収集して購入する本を決めていますので、SNS上での露出が少ない人は本が売れにくい傾向にあります。

ジャンルが一次創作の場合

一次創作は作家自身に人気がないと本が売れないとても厳しい世界です。

人気になれば書籍化やプロへの道が開ける可能性が高いので挑戦のしがいはあると思います。

ジャンルが二次創作だが過疎ジャンル、過疎カップリングの場合

連載が終了している漫画やかなり前に発売されたゲームなど、同人誌の需要が少ないケースです。

書店委託をせずに自宅で在庫を保管する場合

自宅に在庫を保管する場合場所をとってしまうため在庫数を少なくするために印刷部数を減らした方がいいかもしれません。

売上部数を予想する方法

最後に2回目以降の同人誌作成の際に売上部数を予想して適切な印刷部数を算出する方法を記載します。

過去の自分の売上を参考にする

1回同人誌を発行すると自分の本がどれくらい売れるかの実績ができます。

2回目以降の同人誌作成の際は実績を元に算出すると良いでしょう。

ただしあなたの活動ジャンルやカップリングが変わっていたり、流行りが変わっていると実績が参考にならない場合もあります。

同ジャンル・同カップリングの作家さんの部数を聞いてみる

同ジャンル・同カップリングに仲の良い作家さんがいる場合は過去の同人誌の印刷部数を聞いてみるのも良いかもしれません。

ただし売れる部数はその人の人気に左右されるものなのであくまで参考値です。

また、部数はお金に直結する内容なので尋ねるならば気心の知れた作家さんのみにしてください。

PixivやTwitterに掲載したサンプルのリツィートといいねの数を参考にする

発行予定の同人誌のサンプルをSNSで投稿して反応を確認するのも良い方法です。

ただし「リツィート」や「いいね」はタダでできますが、同人誌を買うのにはお金が必要なのでハードルの高さが全く違います。

「リツィート」や「いいね」の数よりも実際に売れる部数は少ないと思っておいた方が良いです。

PixivやTwitterでの部数アンケートを行う

こちらも「リツィート」や「いいね」と同様、アンケートで「買う」と答えた人の全てが実際に購入するわけではありません。

あくまで参考程度に思っておいた方がよいです。

部数は同人誌作成の一番の悩みどころですが、どんなに悩んでも正確な答えは出ません。

初めての同人誌は100部にすると決めてしまって、原稿作成に注力した方がよいと思います。